おねがい☆ツインピークス

原野商法1997のサブブログ

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ガールズオンザラン26話 銃と団塊(中編)

あらすじ
少女を連れた対テロNPOだかNGOだかなんだかわからん組織のS県福祉公社と、おっさんのテロリスト会口さんがたたかってんの。で、会口さんの独白なう。


火縄銃は世界と私を媒介するものだった。
年寄りの冷や水と、韓国への旅行(というか戦災児ボランティアとアイドルの歌謡ショー)へ行く妻に言われた。
よく似た夫婦じゃんか、と息子に言われた。
土日に米長市行われる火縄銃保存会に片道1時間半ほどかけて毎週通った。
平日は地元の「団塊の世代NPO」にも参加していたから、隠居とは程遠い年金生活となった。
国友博物館の館長は黙って私に、火薬と玉を渡した。
彼は怯えていた。
何に使うかも尋ねなかった。
それを持ちだして保存会の講習を受けた。
ミリタリーのオタクと、フリフリの格好をしたオタクの彼女。
農閑期のお百姓さん。
動物の絵の貼ってある運動着を来たチンピラ。
まあ、良く言えば趣味人のサークルだった。
「じゃあ、あなたは違うの?」
と妻。
「違うよ」
私は、私になったんだ。
その為の銃だ。
という言葉を食卓で飲み込んだ。

一回の会合では、保存会のちっちゃな銃を借りて、一人十数発のだけの弾を撃った。
そして、すぐに飲み会となった。
銃の衝撃音に慣れなかったのか、飲み会に参加するだけになった団塊の世代の人間もいた。
「なめているな」
「なにを?なにを真剣になっているの?」
と妻。
銃は命に繋がっている。
大洋を越えてきたポルトガル人と、戦国の人殺しどもが、この地に歴史とともに埋めたものだ。
居酒屋の中国人亡命者が餃子を持ってくる。
無言でそれを食んだ。

私は無言でただ撃った。
変人だと思われても別によかった。
もう、私は無理をして常識人ぶる必要はないからだ。
常識。
何のための常識だろう。
仕事のため?
家族のため?
社会のため?
人生のため?
結局、それは自分の本来性からの逃避に他ならない。
博物館の館長はにらみ付けただけで石になった。
彼も、このサークルにいるやつも、銃と人生の本来性に気づいていない。
私は、館長の目を見つめた。
おまえは、今まで本当に生きてきたのか。
おまえは、嘘をついていないか。
かつての日本の繁栄と、かつての青春。
その欺瞞。
だから、おまえは歴史になんぞ見入られてしまうのだ。
歴史のために銃があるのではない。
銃こそが、おまえこそが、この世界の中心だ。

1日千発。
弾と火薬は火縄銃博物館の館長に持ってこさせた。
的が足りなくなってからは、土嚢が崩れるまで引き金を引き続けた。
努力ではなかった。
もっと本質的なものだった。
装填の速度や正確な照準は重要な要因だ。
だが、技術の向上を目指して銃を撃ったのではない。
そんなものは、銃を手にした時から自然に備わっていた。

私はうれしかったのだ。
私があの空と出会い、私が私と合一できたことが。
私は、欠損を抱えていたことをはじめて知った。
仕事も、家族も、誰もそれを教えてくれなかった。
上司も、取引先も、部下も、妻も、息子も。
困難はあった。
営業周りは、正直向いていないと思った。
寝られない夜もあった。
飲み屋で言ったグチが、次の日問題になることもあった。
ヤクザヤチンピラが会社に押しかけてその対応もした。
人事部長が最後の仕事だった。
未曾有の不況。
若者の就職難。
私が就職する時も、オイルショックで大変だった。
けど、無能なやつはいらないと思ったから、落とした。
私なりのメッセージだったが、彼は会社にナイフを持って押しかけた。
あの時、銃があったら。
私は。

暗い穴を私は見つけた。
同世代の革命家たちも、おそらくあれだけ暴れたのは、この穴に早く気づいたからだろう。
私は、彼らを軽蔑していた。
けど、それは大きな間違いだった。
TVで連合赤軍のドキュメンタリーを見たことがある。
自分とは違う青春を送った人間たちだと再確認する。
それと同時に、彼らが銃を強盗して以来、狂気に塗れていく姿が強く印象に残った。
「銃の物神化」という言葉が出てきた。
その言葉自体は否定的なニュアンスで使われてはいた。
「銃を物神化してはいけない」という具合に。
銃をぞんざいに扱ったものはリンチにあっていた。
思えば、肯定するにせよ、否定するにせよ、彼らは銃に魅入られていた。
革命が「主」で、銃が「従」だと過激派は思っていたのだろう。
だが、それは逆だ。
銃のために革命があるのだ。
銃は全ての目的であるのだ。
だから私は、今ここにいる。
過激派は銃と出会ったから、あのような惨劇を始めた。
もし私が、もう一度人生があったとして、あの山荘にいたら?
左翼の理屈ははっきり言って判らない。
単なる小児病だろうと思う。
革命はただのはねっかえりの夢だ。
でも、だ。
私が、あの時に、あの場所にいて、銃を握っていたら?
崇高なものと私は、世界は、合一していただろう。

撃った。
撃った。
撃った。
帰ってくると肩が腫れている。
脱臼していた。
妻が通っている整形外科の湿布を貼ると一晩で傷は癒えていた。

火縄銃保存会のオタクみたいな子がサバイバルゲームをするというので、無理に乗り込んだ。
「会口さんは、銃はすごいのはよくわかりますけど、サバゲーって歩きまくりますよ。大丈夫ですか?」
というので、とっさに銃で撃ちたくなった。
なぜ、こいつに戦争遊びをすることが許されるのか。
ぐっと我慢した。
私は不言実行タイプだ。
行動でみせつけてやればいい。

ユニクロのジーパンでサバイバルゲームに参加するのも何だから、ホームセンターで装備を買った。
安全靴に、作業服。
弾を入れるためのウェストポーチ。
ゴムの滑り止めがついた軍手。
PB製品かつ、できるだけ高級なものを選んだ。
問題は頭部を守るヘルメットだった。
建築業界のものが最適と思われたのだが、原色の目立つ色のものしか置いていない。
仕方がないので店員に聞いて茶色の塗料を買った。
次の日にヘルメットを塗っていると、フリーターの息子が怪訝な顔でこちらを見ている。
「親父、何を始める気だ?」
お前には判らないことだよ、と答えようと思った。

サバイバルゲームはすぐに私と参加者全員との闘争になった。
チーム戦ではお話にならないからだ。
彼らは、ヘルメットに手ぬぐいにゴーグルという過激派然とした私の格好にあきれていたが、その顔はすぐに恐怖に染まった顔になった。
笹の生え、間伐した木が転がる斜面。
整備を怠っている山道。
枯れたススキとセイタカアワダチソウの密林。
あらゆる場所を私は最短の距離で移動した。
正面からでも殲滅はできるが、あえて頭を使って側面に回りこみ、まちぶせをした。
相手は息を切らしていた。
私をバカにした報いだ。
川にたたき落とした。
落ちている反吐に顔面をぶつけてやった。
私は、わるく言えば傲慢になっていた。
後ろの世代よりかは、私は戦後民主主義的な教育を受けていたはずだ。
私は旧軍的なシゴキというものはずっと嫌いだった。
勤め人時代も、それなりに民主主義的な上司として振舞った。
けど、あいつらの気持ちも今はわかる。
命のやり取りを真剣に行わないやつは、殺されるだけだ。

園芸用のスコップで穴を掘って塹壕にした。
木に登った。
事前に地形を下調べして奇襲を心がけた。
弱者との闘争において、自身が慢心してしまうことが一番怖い。
勿論、そんな努力はサバイバルゲームの勝敗において無意味だった。
どんな不利な状況でも、私の撃つおもちゃの弾丸は全てやつらの急所に当たったからだ。
ゲームも数回目になると、私は銃を捨てた。
ハンデをつけないと、体や魂が怠ける。
単なる銃を持った人間を追いかける鬼ごっこになった。
リーダー格の男は、さすがは元陸自だとは思った。
大学では山岳部だったそうだ。
少女の絵(彼女は下着を見せている)の描いた車にのっている軟派なやつだという私の先入観を恥じた。
勤勉さも戦闘観も申し分ない男だ。
自衛隊はゼイキンドロボーじゃないとも思った。

私は下見をして詳細な地図を作った。
もっと大きなスコップを持ち込んでそこらじゅうに安全地帯を作った。
穴を掘るのは、結構趣味に合うと思った。
1回目は、穴から這い出したあとで、後ろからとび蹴りをかまして斜面から落とした
2回目は、砂を投げつけて怯んだところで首を絞めた
3回目は、木の上から飛び掛った
4回目は、斜面から木を落としてやった。
5回目は、落とし穴
6回目は、川に沈めて、なんども顔をつけてやった。
完勝だ。
自衛隊の男は素手や銃で反撃を食らわそうとした。
しかし、闘争心が私と彼とでは違いすぎる。
「飢えていた少年時代を過ごしたかどうかじゃないか」
と飲み会で語ったら、次の日から自衛隊員はサバゲーにも保存会にも来なくなった。
7回目の勝利で奴は失禁をしていた。
睨んだだけなのに。
自衛隊の彼女は言った
「邪眼ですね」と
中二がどうのとフリフリの女は語って、私にセックスを求めた。
もちろん、断った。
メデューサの目。
邪目か。
ガキのような能力だ。
山荘の過激派にも、私と同じ能力者がいたのではないかと思った。
だから、あの惨劇は生まれたのだ。




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  1. 2015/01/04(日) 08:46:55|
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ガールズオンザラン25話 銃と団塊(前編)

あらすじ:ここはイタリヤじゃなくて日本。ゴディバがイオンのテナントに出店され、テロが国境を越えるように、イタリヤの技術は輸出され、日本でも義体は作られた。義体と、彼女たちの介助者たちは、安い給料で戦う。誰と?五族協和派と。五族協和派って?それは少し前に流行ったリベラルとウヨクの転向形態。そいつらが、中国の内乱と一緒に決起する。それを、なんていうのかな、自衛隊にも警察官にも公務員にもなれない、ホームヘルパーの資格も持たないやつ=S県福祉公社の兄ちゃんと義体の少女たちが迎え撃つ。タイムカードを打って、銃も撃って。素人に勤まるのかって?そりゃ、勤まらない。だから安い給料で沢山人を入れる。どこかの企業といっしょさ。それにな、AKってあるだろ、あれは素人のための銃だ。だから彼らでも何とかなる。そんな福祉公社の主人公:棚橋君の前に現れた敵。ヘルメットと手ぬぐいを装備したおっさん。火縄銃で、もう三人ほど福祉公社の社員をやっちゃっている。どうなるんだ、今日の葬式。どうなるんだ、香典。喪服とか持っていないぞ棚橋くん。で、主人公を散々な目にあわせた、会口という団塊の世代の話から、久々にお話は再開する。




「会口さんは全共闘だったんですか」
「違うよ。迷子だったんだ」
守津市は旧道沿いの宿場街として栄えた町である。
旧道沿いには、商店や宿が立ち並び、かつてはそこが守津市の中心街であった。
都市圏への通勤者を見込んだ郊外の宅地開発が進み、戦後盛り場は駅前の商店街へ移っていく。
スーパーマーケットのピース堂もここに5階建ての大型店を構えた。
その駅前は今では廃れている。
モータリゼーション化によって人々は駐車場のないごちゃごちゃした駅前には近寄らなくなったためだ。
郊外には2階建ての巨大SCができて、歴史と伝統と双子山伝説の街である、この守津市も全国どこにでもある一つの類型的田舎町(その衰退の仕方も含めて)となった。
「じゃあ、全学連系ですか?」
パソコンの講師が質問をする。
目が輝いているようにも見える。
「そうじゃなくて、ね」
講師は自家製と銘打ったカルアミルクを一口含む。
私の友人がこの店に卸しているフェアトレードのコーヒー豆で作ったものだ。
「団塊の世代全員が<政治>に関わっていたというのは誤解だよ。何を期待しているのか知らないが」
変な子だ。
若者は政治に興味がない、というのがちょっと前までの相場だったのに。

パソコンの講師は五族協和派だった。
江戸時代から続く守津市の宿場街にあるこのカフェバーが彼らの交流所だった。
宿場街の衰退は駅前よりも悲惨なものだった。
トロ箱が朽ちている魚屋だった家屋。
20年前のポスターがまだ貼ってある化粧品屋。
客が入っているところをみたことがない、瀬戸物屋と金物屋。
屋根が落ちかかっている寺と神社。
車は旧道を抜け道に使い、歴史的な宿はマンションに建て替えられた。
駅前の再開発は幾度も話題になるが、この旧市街への措置案は一向に出てこなかった。
守津市宿場協議会主催の「宿場祭り」も戦時のドタバタで自粛というか立ち消えになっていた。
その守津市の旧道に活気が戻ってきていると、昨日の新聞の地方欄に書かれていた。
若者や元従軍者の就労生活支援NPO,
半公営の託児保育所。
ソフトウェア開発会社。
若者むけの町屋風カフェと飯屋。
古着屋と古本屋とパソコンショップ。
街道の一角だが、家賃の安さと駅から近いこともあって人通りができている。
また軽自動車をバス代わりにした「守津市コミュニティカー」が市内を駆け巡り、ここが終点ともなっている。
たしかに車ではアクセスしづらいが、若者は車を持てるような状況にはないし(やたら自転車やバイクは見かける)、また路駐しても通行車が少ないので大した迷惑にもならなかった。
勿論、さきほどのバスを使う手もあるし、地元の名士の出資で結構な広さの(ただし老人ホームと図書館と共用ではあるが)駐車場も作ってある。
おそらく裏では五族協和派の若きカリスマであり、この町出身の王崎公平が宿場の発展に関係していることだろう。
これは公然の秘密みたいなものだ。
この酒場のような協和派のアジトに、福祉公社の職員が出入りできないのも、王崎と彼を応援する地元の支持者のお陰だろう。

戦争が起きた。
日本の官僚機構は「構造改革」がされた。
勿論、シンプルではなく複雑怪奇な方向へ。
治安に関する組織だけでも、旧来の警察に加えて、警察ボランティア、警察OBとインターンの若者集団、地方自衛隊の監察支隊、在郷軍人会、そして児童の集団下校を見守る「スクールガード」から派生し、社会福祉協議会の中で肥え太って独立したS県福祉公社。
警察の権力は拡大したが、そこまで左翼や協和派が警察を警戒していないのは、彼らと縄張り争いをする集団が、戦時に多数出現したからだ。
警察は思ったほど自由には動けないし、逆に言えば、新興の暴力集団の福祉公社もそうだった。
拡大された自衛隊や自治組織は、警察を目の敵にしていたが、敵視は勿論公社の連中にも向けられている。
あんな社会福祉から出現したわけのわからない組織を彼らがよく思っているはずがなかった。
王崎はおそらく、その辺りの権力図をハックし、この宿場街に解放区を作ったのだ。
「神田カルチェラタンってこんな感じだったんですかね」
「だから、知らないよ」
解放区、という言葉に噴出しそうになる。
ああいうのは世代の恥だと思うのだが。
でも<政治>的なものに没入している若者と、この私が結局つるんでいるわけだから、ああいう恥ずかしいものから、私も抜け出しきれていないのだと思う。
幸の薄そうな顔をした娘が地ビールを持ってくる。
スーパードライを注文したかったが、置いていないという。

地ビールは中国産の麦とコーンスターチを使い、守津市の米と混ぜ合わせて、この商店街が醸造をしたものだ。
中国産という響きは、戦時下において変化してしまった。
農薬まみれの貧困層むけのイメージから、ロハスで、自然派志向で、進歩的なものへと。
「これって満州で作った大麦らしいですね」
中国東北部産か。
中国での内戦は、日米を中心とする新国連軍の支援もあり、中国の改革派の勝利におわったとされる。
世界資本主義システムに組みこまれた「自由と民主主義」勢力が東北部や北京を占領して、この革命は成功した。
しかし朝日新聞もNHKニュースも言っているように、これは建前上の統一に過ぎない。
中国共産党の守旧派。
旧中国陸軍と地方の有力者。
軍の愛国者。
そして中国が国連の統治下に入ることを拒み、解体された中国とアジア諸国、そして日本の反政府勢力が結合し、この混乱に乗じてアジア共同体を建設しようとするアジア主義者。
五族協和派。
彼らは、アメリカや日本にとって都合のよい中国など認めないだろう。
でも、だ。
王崎は、おそすぎたのではないか。
もはや、大勢は決まったも同然だ。
ビールを一口含む。
八角の匂い。
王崎だけではない。
この私が、私と出会い、銃を握ることも。
なぜ、もっと早くに動けなかったのだ。
2年前のことを思い出す。
そうか、私は単なるサラリーマンだったのだ。




  1. 2015/01/03(土) 23:42:50|
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ガールズオンザラン24話 鴨と蟹

雑なあらすじ
ボンクラ自称ワープア対テロリストNPO的な何かであるS県福祉公社。日々テロリストを成敗してたんだけど、宿泊研修中に襲ってきた団塊の世代のおっさんテロリストは何か強そうなので困ったニャン。


公園の森から野鳥が飛び出していく。
轟音を自らを狙うものと勘違いしたせいだろう。
宿泊施設近くには江戸時代に貯水用として造られた池があり、その場所にいた水鳥たちも飛び立つ。
鳥たちの悲鳴。
一羽の鴨が落ちる。
空を撃つ銃弾が偶然当たったためだ。
職員たちは見えない敵に向かって銃を撃ち続ける。
青い首の鴨。
旨いだろうな。

応射だ!応射!
誰の声かは判らない。
自衛隊のおっさんは死んだ。
多分やる気のあるやつが唸っているんだろう。
福祉公社をキャリアの足がけにして、消防隊や自衛隊、警察官に転職する。
体育教師を目指しているやつもいるし、大陸で平和維持活動臨時職員を始めるにもこの職はいいステップアップだ。
ショッピングモールのガードマンっていう手もある。
だからやる気を見せたほうがいいし、積極的に行動すれば、自分なりにノウハウや経験値はたまっていくだろう。
ぼくも、今、うって出るべきだろうか。

ということをぼくは溝の中で少し考えた。
ソーニャは狙撃されたおっさんたちをみて、呆然と立ちすくむ僕を引っ張った。
義体にとってフラテッロとは世界の全てなのだろう。
後ろ襟を少女は掴むと、素早く強引にしかも雑にひきずり、そのまま排水溝に僕を放りこんだ。
深さ50センチほどのU字溝のコンクリートの側面で頭をこする。
痛い。
ソーニャ、むちゃくちゃだよ!
といいたくなったが、ここなら多分銃は当たらないはずだ。
溝には水と砂が少したまっている。
その水分で半身を濡らす。
頭を上げると、少女が溝の上をまたがる様にしてAKを撃っている。
スカートの裏地が見える。
相変わらず職員がジャージとか作業服とかユ○クロのジーパンなのに対し、義体の少女たちはいい格好をしてもらっている。
裏地の中の下着。
今時は売っていないであろう野暮ったい白の下着。
その股布の縫線。
膨らみと窪み。
首を捻り、もっと少女の秘所に近づけようとした。

生臭い匂い。
苔と藻と魚屋の匂い。
蟹がいた。
蟹と目が合った。
溝で生きている沢蟹。
そいつが僕の顔に襲いかかろうとした。
鋏が鼻に迫る。
咄嗟に顔を上げる。

コンクリート片が跳んだ。
石礫が頬にあたる。
蟹が砕ける。
穴がU字講に空いている。
潰された蟹の反対方向を見る
目が合った。
茂みに体を隠している。
緑のヘルメットに手ぬぐいを口覆っている
あいつが、狙撃手だ。
口が痙攣して上手く声が出ない。
かも?
かに?
頭をコンクリートに打ち付ける。
唇が震えているんだ。
止まれ。
そうか、
怖いんだ。
蟹のように、鴨のように殺されるぞ。
白い下着。
「ソーニャ!あっちだ!」
指を差した方向を、ソーニャが日本製AKをむける。
7、何ミリだったかの大きな弾が芝生の上を這うように流れる。
茂みが芝刈り機に巻き込まれたように絡まり千切れていく。
葉が、枝が四散する。
茂みが噴火し、のどのおくから生き物が、鴨や蟹が這い出てくる。
この感覚は何だろう。
たぶん、敵はいつもの、どうしようもないやつじゃない。

頬をコンクリートの側面からはがす。
半身が泥水で汚れている。
立って芝生の敷き詰められた広い広い公園を見渡す。
頭を撃たれた職員の遺体が何体か。
その亡骸のよこで呆然と立ち尽くしている、未亡人になった義体。
どこからかやってきた少女。
生まれた故郷を捨て、記憶を消され、薬物で心を失った、人間のまがい「物」。
からっぽの少女たちには、フラテッロへの愛がインストールされ、それによって彼女たちは稼動している。
そのフラテッロを失うということは、再び彼女たちが、世界を失うということだ。
空。
崇高な空。
この少女たちの故郷へと、世界へと繋がっている空。

最初に殺されたプロサッカーワナビの友人だった職員が、茂みに近づく。
狙撃手の遺体を確認するためだ。
勇敢なことだ。
勇敢?
なんで僕は彼を勇敢だと思うのだろう。
それはあのサッカー野郎が無謀で勇気があると思うからだ。
なぜ勇気が?
ああ、やばいんじゃないか。
たぶん敵は大きくて、この世界を覆っているような何かだ。
だからアレぐらいでは死なない。
AKを持った歩兵部隊を一人で四散させたから?
それもある。
でもそれだけじゃない。
あいつは、何かを背負っているし、そういうものを投げ捨てている。

高周波のような音。
それが男の声だとわかる。
悲鳴なのか雄たけびなのかわからないが、確実に何かが起きた。
茂みから男が飛び出す。
やや低めの中背。
緑のヘルメット。
迷彩柄の作業着。
トレッキングシューズ。
包丁がくくり付けられた銃。
血液。
壮年の、濁った、目と歯。
「ソーニャ、逃げよう」
僕はフラテッロの手を引いた。
強姦するように、ひどく力をこめて。
殺されるぞ。
鴨のように、蟹のように。




  1. 2014/04/12(土) 03:57:36|
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ガールズオンザラン23話 銃と壮年

「おー、当たった」
思わずガッツポーズをしたくなった。
そんな暇はないので、新聞紙に包んだ火薬と弾の端を破って、筒に放り込む。
そして、杖で押し込む。
ビリ、タン、タン。
われながらいいリズムだ。
取引先で出会った、勤20年の職工に迫るような動作。
M下電気のエアコンのリモコンを作っている工場だった。
ハイテク日本の現場にいた俺と同じ年齢の男たち。

杖は片付ける。
いちいち仕舞ったほうが効率的だと私は信じている。
整理整頓は得意だ。
「白目が見えたら撃つ」
というのが火縄銃というか、この国友製の銃のセオリーであるらしい。
米長市の歴史保存会の学芸員が言っていた。
老眼のせいか、興奮しているせいだろうか。
遠いところまでよく見える。
息子と同じ背格好の若者と、義体の少女たち。
その白目が、自分の鼻先にあるように感じる。
昔、読んだマンガ。
星一徹だったかの、野球のプレーだ。
球が止まってみえるというやつだ。
いや、川上哲治だったか。
山の空気が見える。
風が絵のように流れている。
時間が熱せられた飴のように、粘度を帯びて流れる。
時間が止まった。
ゆっくり、ゆっくり、赤い肌をした私より少し上の世代(石原裕次郎世代か)が立ち上がる。
「てーきーだー、、、」
間の抜けたスローモーションだ。
そして白目だけが、私の銃口の先にある。
「この銃はライフリングが刻んでありません」
ライフリングって何だ。
「球に回転を加えるんです。そうすると球は真っ直ぐに飛びます」
ほうほう。大リーグボールみたいだな
「あなたの銃にはライフリングがないんです。そうすると球は空気抵抗で、どこに飛ぶかわからない。」
はは。と笑い出しそうになる。
人生最大の山場でマンガとか野球のことを思い出すなんて。
どこに飛ぶかわからない。
だから、白目が見えるまで接近する。
でも私には、的の目が、手で掴める先にあると思った。
空気の粘度も判る。
だったら、昨日の夜のように、当たる。
「ふーせーろー」
石原世代の男は、たぶんその姿勢のよさと風貌からして、おそらく一番デキるやつだ。
どうせ撃つならデキるやつを撃とう。
しかし、伏せろだと。
人に伏せさせるときは、自ら率先して手本を示さないと。
何とか言う日本海軍の提督がいったのかな、いや、よく覚えていない。
ふせろ、という前に自分が伏せないと部下はついてこない。
いや、部下が無能すぎて、率先しただけではついてこないから、まずは号令しているのか。
優秀か、無能か、よくわからない男だ。
でも、多分、あのなんとか福祉の中では優秀な方なんだろう。
所詮は公務員の端くれだな。

火が見える。
意識を研ぎ澄ませていると音は聞こえない。
弾が空気に押されて、ぶれる。
蛇行する弾の先に、壮年の男の眉間が合わさっていく。
「ストライーク!」
思わず口の中で叫んでしまった。


守津市から50キロほど離れた米長市は降雪地帯で知られる。
実際に冬に来て見ると空気が湿っているのがわかる。
内陸ではあるが雰囲気としては北陸に近いものを感じる。
古戦場や古城で有名な町で、NHKドラマのロケも何度か行われた。
妻とも何回か観光に来たこともある。
地域とか町づくりとかコミュニティーセンターなんとかには協議会がある。
その協議会繋がりで、米長市のセンター長に我々は招かれた。
米長まちづくフェスタの視察である。

米長市営農平和維持隊(要するに、お百姓さんによる戦場ボランティア)が中国で学んだ本場風の水餃子を振舞っている。
地元の米粉を使ったパンと、陸上自衛隊米長駐屯地のカレーのセット。
戦時障がい者製作のキャラクターキーホルダー。
そして同じく戦時障がい者テクノバンドの演奏。
地元のキャラクターのコスプレショー。
テレビ局も共催しているとのことで、なかなか凝った催しものになっている。
さすがはS県随一の観光地だけのことはある。

ステージのショーも中盤を過ぎたころだ。
戦国時代の甲冑を着けた男たちがぞろぞろ段に上ってくる。
「国友鉄砲術保存会」とのことだ。
鎧や兜の考証がむちゃくちゃすぎる、戦国BAKARAじゃないんだから。
とPC教室の先生が笑っているのを、岩岬が制止する。
「好きなことやっている奴を笑っちゃいけない」
だと。
確かに珍奇な風景だ。
あんな重装備で鉄砲を撃てるはずがない。
年寄りの冷や水かもしれないが、そんなことを言い出すと私も岩岬も彼らも同じようなもんだ。

中国大陸の平和安定を祈願してー、撃てー

眼球が押されたような気分だ。
押し込まれた眼が脳に信号を送る。
化学物質が血液中を巡る。
青い空だ。
私はやっと出会えたのだ。
私自身に。
私自身の欠損と、過剰に。

三回の一斉射撃。
体中の細胞にある遺伝子の一部分が今、書き換えられた。

「岩岬。」
「なんだ会口。」
「俺、あれをやってみたい」

本来私はひっこみ思案な方だった。
だが、サラリーマンを40年やってきて判ったことがある。
本質はたびたび経験によって塗り替えられる。
私の人嫌いも、幾人もの他者との交わりのなかで磨耗していった。
させなければ生きていけないということもあった。
まず、行動しろ。
全く理解できない同世代の左翼の意気込みが、なんとなく腑に落ちていった。
私は名刺を保存会のリーダーにその日のうちに渡した。
イベント後のリーダーは気分が高揚していたせいか、その日の打ち上げに私と岩岬を誘った。

米長市までの五十キロを私は車で通った。
フリーターだった息子も、妻もあきれていたが、私がだらだら家にいないよりはマシと考えたようだ。
それに妻には「息子の就職口のつてになるかも知れない」と嘘を言っておいた。
会合の初日は平日だったので、リーダーと私しか参加者はいなかった。
リーダーは国友銃の郷土史博物館に私を誘った。
観光地から少し離れた田んぼの中の在所に旧家を改造した博物館はあった。
私と同年代の男が受付をしており、「おたく」ともいえるようなもの好きな若者相手に戦国時代の話をしていた。
60歳以上は半額だった。
ふふ。齢をとるのもいいもんだ。

ビデオを見せられた。
国友火縄銃の歴史と、郷土の誇り。
国友の成立は、ここが古戦場から近いこともあるのだそうだ。
そうか、関が原も近いもんな。
二階に上がると火縄銃がガラスケースに幾点も展示してある。
ほとんどが江戸時代のもので、銃器には意匠がほどこされており、この時代の兵器は実用性よりかは趣味性の高いものであったことがよくわかった。
いや、ほんとうはそんなことさえも思っていなかった。
私は小さな館内の中央に展示してあった火縄銃に目がいった。
銃の感触を知ってもらえるようにと(鎖はさすがについてあったが)実銃が展示してある。
「まわりの人に銃がぶつからないように」
という古い注意書きだけがしてある。

手にとる。
また、空が見える。

「どうだ、重いだろう」
その質問の意味がわからなかった。
重いとは、この銃のことをいうのだろうか。
保存会リーダーは、鉄塊の銃を軽く扱っている自分を自慢したいようだ。
「この銃は、それでも軽いほうだ。うちらはもうちょっと重いものを使う」
そうですか、おもいですね。
なぜか話を合せる。
鼓動が高まる。
その音を気とられないようにする。

構える。
引き金を引く。
「会口さん。あんた始めてじゃないだろう」
リーダーの顔が強張る。
やっぱりこの男は偽者の嘘つきだ。
こいつは、本当の意味で銃を持ったことがない。

銃を持つのは初めてじゃない。
私は、生まれる以前から銃を抱いていたのだ。
あの青空の下、ただ一人で。
私が私だった頃。
レプリカの銃をもう一度、構える。
丸薬を装填する。
引き金を引く。
閃光。
目の前の初老の男が膝をつく。
私は、空砲でも、人を殺せる。
私は私になったのだから。




  1. 2014/04/07(月) 20:11:30|
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シロクマとメイドの続き 5話 休日は夕方に起きて

スイッチが入る。
脳みその中の機械がゴチャゴチャ動く。
目が覚めると、その太陽が朝焼けか夕焼けか判らなかった。
冬になってすっかり昼夜が逆転したようだ。
と、ご主人さまの無精ひげを見ながら思う。
方向を確かめると、夕焼けであることがわかる。
これから洗濯をするのは無理だし、布団を干すのも無理だ。
掃除もできない。
買い物もできない。
だから今日は私の休日だ。

ストーブに薬缶を置く。
そして本を開ける。
陽が傾く。
空の灰色、山の灰色、人の世界の灰色。
三つの灰色が混ざっていく。
「光あれ」と昔の人はいった。
混沌をかき混ぜて世界は作られた。
葦が生い茂る神代。
それは、冬のこんな時間だったに違いない。

湯が沸いたのでコーヒーを大量に入れる。
味覚のセンサーがこなれてきたせいか、なんとなく旨い不味いも理解できてきたような気がする。
大量に入れたコーヒーに大量の砂糖を入れて飲む。
匂いがわかるということは、これほどまでに感動的なことなのだと思う。
CPUにカフェインは効かないけど。
ご主人さまにも勧めると
「夜寝られなくなる」
とか可愛いことを言い始める。
夜って、もう夜じゃないか。
夕方から起きて、それから数時間で一日が終わる。
幸せなことだ。

沸騰する水の音だけが聞こえる。
ガラスが蒸気で曇りはじめる。
ご主人さまはタブレットのゲームに飽きたようなので、今私が読んでいる本の最初の巻を捲っている。
私の本の趣味の師匠はご主人さまなのだが、大量に積んである本の中にはご主人さまが目が通してないものも多い。
だから、たまに私のほうが先に本を「発見」することも多い。
狼の神さまと商人の話。
まだ人間が世界の中心にいたころの、神と人間の話。

アニメもある、とご主人さまがいう。
ストーブを消して、電気も消す。
寝室でふとんをかぶって、モニタの前に座る。
オープニングがいい歌だった。
夜で感情が高ぶっているのだろう。
涙が溢れる。
なんの意味もないシーンや歌。
世界のどこかにある平原、波打つ丘。
どうしてこんなに響いてしまうのだろう。

ゆっくりと時間が止まる。
温かい闇が目の前を覆っている。
世界がずっと冬の夜だったら、どれだけよかったのだろう。
涙を勘違いしたせいかご主人さまが肩を抱いてくれる。
TVの光だけで照らされた部屋。
神代に続く冬の夜。
起きて夕陽を見た日。
それが私の休日。





  1. 2014/04/06(日) 22:07:45|
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保田やすひろ

Author:保田やすひろ
ぼくたちの現実が変わらぬかぎり、ぼくたちは執拗にぼくたちの絶望を固執しなければなるぬ。―もし希望というものが生まれうるなら、それはまさにこの絶望のうちからである。とすれば、ぼくたちはこの絶望を観念によって救おうとしてはならない。(福田恒存)

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