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<title>おねがい☆ツインピークス</title>
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<description>原野商法1997のサブブログ</description>
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<title>シロクマとメイド36</title>
<description> 三日ほど溜めた衣類を洗った。私が生まれた頃から同じ形をしている洗濯機から、ダマになったそれを取り出した。四日ぐらい洗濯しなくても汚れ物は大した量にはならない。私の服は滅多なことでは汚れたりしないからだ。竿に湿ったシャツを掛ける。顔を上げると、遠い空の青を、目の奥のセンサーが捕らえた。人を呪うような青。勿論そう思えるのは、私が僻んでいるだけだろう。私は人間によって造られたロボットで、造られて以降はご
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<![CDATA[ 三日ほど溜めた衣類を洗った。私が生まれた頃から同じ形をしている洗濯機から、ダマになったそれを取り出した。四日ぐらい洗濯しなくても汚れ物は大した量にはならない。私の服は滅多なことでは汚れたりしないからだ。<br /><br />竿に湿ったシャツを掛ける。顔を上げると、遠い空の青を、目の奥のセンサーが捕らえた。人を呪うような青。勿論そう思えるのは、私が僻んでいるだけだろう。私は人間によって造られたロボットで、造られて以降はご主人様に育てられたと言ってもいい。だとすれば、ご主人様も僻んでいるだろうし、工場の人や、設計者も僻んでいるのかも知れない。「そんなことを考えても何も始まらない。」と独り言を口から出して、空になった籠を持ち、秋色を薄暗くしたような屋内に戻った。<br /><br />黄身がこべり付いた皿、ご飯が付着した茶碗。朝飯の片づけが終わっていないテーブルで、ご主人様が古くて小難しそうな本を読んでいる。薬缶に入った紅茶を、女の子の絵が描かれているマグカップに注ぎながら、ページを捲っている。<br />「朝からそんな本読んでいると、眠たくなりますよ」<br />「何の本読んでいるの？とか聞かないの？」<br />「そんなことより、後片付けぐらいしてくださいよ」<br />相変わらず、会話がかみ合っていない。僻み者同士の会話は、いつだってこんな感じだ。<br /><br /><br />「頭が痛い」<br />と案の定、彼はまだ暖かい布団に戻っていった。私は誘われたように思って、上着のボタンを外した。けど、彼はそのまま寝入ってしまった。気が利く私は、部屋のカーテンを閉めた。苦しいような青が家の中から消えた。甘い闇が、埃の降る家を、閉じ込めていく。<br /><br />人の寝顔を見るのは好きだ。ご主人様のものしか見たことはないが。人が安心しきって自分に身を任せているという快感と、殺傷権を握っている気分になる支配感。いや、何事も起こらず、平穏に時間が流れていくことを確認できるという安心感こそが一番大きいだろう。充電中の私を眺めるご主人様も同じような気分になっているのだろうか。彼のように私も悪戯をしたくなったが、メイドなのでやめておく。<br /><br />ご主人様が寝入ったからには、掃除は中止だ。夕方まで寝ているだろうから、昼ごはんも作る必要はない。不用心だから、買い物にも行けない。することもないから、ＴＶにイヤホンを挿して、途中で放っておいた映画の続きを観た。<br /><br />役人とテロリストの恋。官僚主義と監視社会。んな未来なんてあるわけないじゃん、と一人で突っ込みを入れる。退屈なシーンの合間に、彼の髪や顔を撫でる。<br />「男の首元から、妙に良い匂いがする」<br />と或るマンガに描いてあったので、試してみる。匂いが存在するのは判る。が、それが良い物か悪い物かロボットなのでよく判らない。<br /><br />ラストシーンで男が女の手を牽き、未来都市からの逃亡をはかる。しかし、それは夢オチで、彼は囚われて処刑されてしまった。捻くれていて、なかなかに良いラストシーンだ。活躍やアクションや希望は、全て夢オチなのだ。<br /><br />寝ているご主人様の耳たぶを揉む。彼もシロクマの夢を見ているのか。<br />「おおおおおぉぉ」<br />彼は叫びながら、起きあがった。そんなに耳たぶを弄られるのが嫌なのか。どうしたの？ご主人様？<br />「ああ、判らん。いや、そうなのか。夢か。」<br /><br />台所まで行って、冷め切った茶を汲んで、彼に手渡す。彼はマグカップの水面を眺めて、半分ほどそれを飲んだ。息を吐いて、彼は私を見た。<br />「君がいることが、夢のようだと思う」<br />昨日の未来は、もうここに実現している。夢のようだなんて、そんなことロボットの私に言われても困る。<br /><br /><br /><br /><br /><br /> ]]>
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<dc:subject>シロクマとメイド</dc:subject>
<dc:date>2009-10-17T13:17:41+09:00</dc:date>
<dc:creator>保田やすひろ</dc:creator>
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<title>シロクマとメイド35</title>
<description> 収穫祭にやってきている。祭りを楽しむためじゃなくて、お米を買いに。収穫祭のときに買うと、市価の二三割は安いのだ。私たちが住んでいる場所は、昔湖だった。太平洋戦争が終わった後に、食糧不足解消のため、入り江と湿地は干拓され、一度は水田になった。だけど、復興が進むにつれて、米は余り始める。政府は減反政策を進め、農民たちは食肉生産や果実の栽培を始めた。この前の「戦争」が起きる大分前の話だ。あの「戦争」が始
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<![CDATA[ 収穫祭にやってきている。祭りを楽しむためじゃなくて、お米を買いに。収穫祭のときに買うと、市価の二三割は安いのだ。<br /><br />私たちが住んでいる場所は、昔湖だった。太平洋戦争が終わった後に、食糧不足解消のため、入り江と湿地は干拓され、一度は水田になった。だけど、復興が進むにつれて、米は余り始める。政府は減反政策を進め、農民たちは食肉生産や果実の栽培を始めた。この前の「戦争」が起きる大分前の話だ。<br /><br />あの「戦争」が始まる直前に、この埋立地にリゾート開発の話が持ち上がった。大型の宿泊施設と、湖水浴場。対岸のショッピングモールと遊園地と、こちらがわを繋ぐ橋。しかし、戦争でそれらは全て中断し、投げ出された。戦後は、「リゾート」などという発想自体が破棄された。廃墟になったホテルや商業施設や遊園地は、昔そうであったように、田圃と葦の原に戻されようとている。<br /><br />ここ数十年の人類の努力は全て無駄だった、というわけだ。<br /><br />コンクリートが夏草で砕かれた、あまりにも巨大で意味をなさない建築物。壊れた玩具を入れてあるプラスチックの籠のようなショッピングモールの残骸を眺めながら、ご主人様は<br />「もし、戦争が起きなかったら、僕や君は、ああいう場所で働いていたかも知れない」<br />と言っていた。そういう未来はありえたかも知れない。けど、今のほうがずっといいだろうと思う。<br /><br /><br />遠くで見ている分にはいいが、お祭りは苦手だ。苦手だから、ご主人さまに付いてきてもらおうと誘ったこともあった。無論断られた。今日は誘うこともしていない。ただ「お米を買いにいきます」とだけ言って家を出てきた。<br /><br />青黒いアスファルトと、剥げた白線と、それらに亀裂を刻んで生えてきている硬くて背の高い草。開催者たちが雑草を抜いてできた、昔は運転手たちの休憩所だった施設の駐車場だった広場に、屋台が立ち並んでいる。<br /><br />中央の広場にはくすんだ銀色の金属でできた櫓が立っていて、そのてっぺんから、世界中の国旗が吊るされている。<br /><br />まだ本格的に始まっていないせいか、人はまばらだ。それに皆、けっこうな厚着をしている。夏服の人間はいない。秋服や、もっと寒い季節の格好をしている。そんな場所に、白い半そでの服で来た私は、なんとなく居心地が悪い。<br /><br />祭りの開催時期が、この前来たときより遅くなっている。祭りは米の収穫が終わってから始まるもので、つまり米の収穫時期が遅くなっているということだ。<br />「異常気象で、お米の収穫が遅くなってるんでしょうか？」<br />とご主人さまに聞くと<br />「米の品種が変わったんだよ。昔みたいに、早い時期に植えて、遅くに収穫するんだ。」<br />とのことだ。そのうち祭りの時期には雪が降るかもしれない。とも言っていた。ご主人さまは、生活に関係のないことを良く知っている。<br /><br /><br />ベニア板の屋台がいくつか立っている。まだ準備中のせいか、看板や飾り布が設置されていないものも多い。店の人間を見ると、みかけたことのある顔を数人見つける。市街の商店主が出向いてきているみたいだ。<br /><br />その中の一つに、薬缶やら鍋をぶら下げている屋台があった。「包丁砥ぎます」と看板に書かれてある。黒錆の刃物を研ぐ機械の横に、パイプ椅子に座っている、おかっぱの着物の少女がいた。葉ちゃんだ。向こうから微笑みかけてきたから、こちらも会釈をした。彼女の雰囲気はちょっと前と比べて変わった気がする。体躯相応の、子供っぽい明るさとは少し違う、「堂々としている」というか余裕のある顔つきに、あのロボットの少女は変化している。目が見えるようになる、ご主人様に見られていることを確認し、少女もご主人様を見る。そういうやり取りは、かくも大きいのだろう。<br /><br />それにしても屋台か。儲かるんだろうか。あの綿飴。原価は幾らぐらいだろう。私も家で焼きそば屋を開業するより、こういう祭りの屋台から経験を積んでいった方がいいかも知れない。<br /><br /><br />お米の販売所には、５、６人程度の列が出来ていた。大繁盛と言っていいだろう。並んでいるのは全員がロボットだった。米の買出しのような重労働は私たちの仕事、というわけだ。別にいいけど。<br /><br />目方を告げると、お米を紙袋に入れてくれた。紙袋を縛って手で持とうと思ったけど、袋が破けそうな気がして、肩に担いだ。よく昔のアニメに、巨大な武器を持った葉ちゃんぐらいの女の子が登場するけど、ああいう娘たちの気分がなんとなく理解できる。重たいものを、人の代わりに担ぐのが、私たちの役割だ。<br /><br />ふと前の戦争のことが頭をよぎった。武器。重たい物。「私たちは戦争に参加したのだろうか？」とご主人様に聞こうと思って、ずっと聞かずにいる。でもそれは、聞いても何も始まらないことだろう。今となっては、ただ私達は、単にここにいるだけなのだ。<br /><br />米袋をバイクの荷台に括りつけた。毎度のことながら不格好だ。重さに振り回されて、事故を起こさないようにしよう。エンジンを掛けた時に、御輿が会場に到着した。陽気で地を震わすような声が聞こえる。エンジンを切って、御輿が中央の広場に設置される、祭りの最高潮を見届けたいとも思ったが、やめておこう。祭りは苦手なのだ。それよりも早く帰って新米を研ごうと思う。昔から人がそうしてきたように。<br /><br /><br /><br /> ]]>
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<dc:subject>シロクマとメイド</dc:subject>
<dc:date>2009-09-30T23:36:43+09:00</dc:date>
<dc:creator>保田やすひろ</dc:creator>
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<title>ガールズオンザラン7話　近場のテロリスト5</title>
<description> 頭の中に酸素が回っていないのだろうか。釘が刺さったような痛みが脳みそを貫いている。吐く息が熱い。さっき飲んだジュースが胃の中で揺れている。ソーニャは周囲を警戒し、ＡＫをいつでも撃てる体勢を取りながら坂道を歩いている。「今襲われたら危険です」と。ソーニャは真面目だ。真面目だけど、首を左右に動かし、目で通行人の顔をイチイチ確認するしぐさは、まるで万引きをする直前の子供みたいだ。「もう少しです。頑張って
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<![CDATA[ 頭の中に酸素が回っていないのだろうか。釘が刺さったような痛みが脳みそを貫いている。吐く息が熱い。さっき飲んだジュースが胃の中で揺れている。ソーニャは周囲を警戒し、ＡＫをいつでも撃てる体勢を取りながら坂道を歩いている。<br />「今襲われたら危険です」<br />と。ソーニャは真面目だ。真面目だけど、首を左右に動かし、目で通行人の顔をイチイチ確認するしぐさは、まるで万引きをする直前の子供みたいだ。<br /><br />「もう少しです。頑張って棚橋さん」<br />少女に僕は励まされる。義体をフォローするのが僕らの仕事だ、とかっこつけていた逸見さんの顔を思い出す。<br />「こっちです」<br />とソーニャ。地図は完璧に頭に入っているみたいだ。腐っても義体だな、と思う。ああ、そういえばソーニャとウォーキングをするときはいつも道に迷わなかったな。彼女は、僕とことを考えていてくれる。その彼女への感謝を、たこ焼きで済ます僕。喜ぶ少女。何をやってるんだろう僕は。<br /><br /><br />住宅地の入り口には、線路にかかっている遮断機のような黄色と黒の棒があった。そこには一人用のプレハブのようなものが隣接されてある。まるで駐車場の料金所みたいだ。取りあえず、守衛に許可を取らないと誰も入れないような造りではある。でも、周囲を見渡しても守衛らしき人はいない。プレハブを覗くと「休憩中。ご自由にお通り下さい」と書かれたプラスチックのカードが置かれてある。おいおい。いい加減だな。<br /><br />遮断機付近にはカメラが設置されてあることを確認した。無断で入ると後で苦情が来そうな気もする。どうしようか。ソーニャは「カメラを破壊しましょうか」とか言っている。呆然と立ちすくみ、考えているふりをして、現実逃避なことを脳みそで弄んでいると「守津南中」と刺繍が入ったジャージを着たオッサンがやってきた。テ、テロリスト？<br />「ああ、中に入りたいの？」<br />「そうですけど」<br />「今はいいよ。ところで何やってる人？あんたら」<br />「福祉公社だ」と言おうと思ったけど、言っていいんだろうか。このオッサンがテロリストだったら、変なことになりそうだな。それに福祉公社とか言ってもたぶんこのオッサンには理解できんぞ。<br />「ああ、水道屋さんね。ご苦労様」<br />と勝手にオッサンは僕らを理解した。訂正してやりたくなったが、どう考えても無駄なことなのでやめておいた。<br />１０メートルほど歩いたところでソーニャは言った<br />「何で年を取ってるのに、なんで学校のジャージを着ているんですかあの人」<br />そういう趣味だ！だからソーニャ、君の履いているブルマをくれ！とか言わずに<br />「どうせ息子の着なくなったジャージを着ているんだろ。」<br />と返した。<br />「ああ、そうでしょうね。いいですね家族って」<br />息子の着なくなった学校指定のジャージを着て、外を歩く親父なんか最悪だと思う。が、ソーニャの言った家族という言葉は強く頭に残った。<br /><br /><br />表札を確かめた。この家だ。築二十年。そろそろリフォームをしたほうがいいような時期にさしかかっている物件というところか。公○教室とかをやっていそうな、二十年前なら「開明的」とでも評された、やや洋風よりの和洋折衷建築。禿げぎみの芝生の庭には、さび付いた金属バットと、野球のネットが放置されている。野球少年だった息子がいる家庭、そんな感じだ。ガレージには白い軽ワゴンが駐車してある。かつては夢のあった野球少年が、今乗っている車だろうか。<br /><br />準備運動をしてから、庭の門を開いた。鍵はかかっていない。が、玄関には鍵がかかっている。ソーニャはそれを引っ張った。ガキンと鍵が破壊される音がして、チリンチリンと鈴の音が鳴り響いた。こういう家には玄関扉に鈴が付いてあるものだ。僕の家がそうであるように。<br />「テロリストはどこですか」<br />ソーニャが僕に訊く。<br />「二階だ。二階の子供部屋だ」<br />子供を撃つんじゃない。子供だった奴を、撃つんだ。かつては、夢のあった奴を。<br /><br />外壁は石っぽいタイルだったのに、内装は和風だ。無論階段も木製だ。よくある家だ。ソーニャが土足のまま、中に上がり、エントランスから延びている階段に脚を掛けた。ソーニャが土足で上がったので、僕もそれに従った。仕事中だ、仕方が無い。<br /><br />「あっ」<br />ブーツで階段を登ったせいか、ソーニャは足を段差にひっかけ、後方へ転げ落ちそうになった。後ろからやってきた僕は、小さな背中を両手で支えた。<br />「すみません」<br />義体は仕方ない。だから僕はいるんだ、と脳内で格好をつけた。背中の手を前方へ回したくもあったが。転げ落ちるとパンチラが拝めるような気もしたが。ああ、突き立てたいなあ。<br /><br /><br />三つの部屋があった。一つが夫婦の部屋。もう二つが、兄弟の部屋だろう。色あせた西武ライオ○ズのポスターが貼られてあるドアがあった。あれがテロリストの部屋だ、と瞬時に察した。<br />「破って」<br />とソーニャにドアを指差した。少女はドアノブを回し、捻じ切り、ひっぱった。義体の筋力ではこのくらいのことは簡単であることを最近知った。前のときは銃で破壊していたが、はっきり言って弾の無駄だった。<br /><br />窓枠に乗っかっている男がいた。僕はソーニャが弾を撃たないように、腕で彼女の前を遮った。奴は少年の顔をしている。が、肌の質感は僕と同じぐらいの年齢のものだと思った。同い年ぐらいだろうか。僕と目が合うと、驚いた奴は外に落ちそうになって、強く窓枠にしがみついた。窓から逃げるのなら、今更窓枠にしがみつなよ、と脳みそが無慈悲な突っ込みを入れる。<br />「うごかないでください」<br />と言う。知らない人としゃべるときは、つい敬語になってしまう。それがテロリストであろうと。<br />「は、はい。いや、それはどうかなあ・・・」<br />と奴は混乱している。<br />「公社ですか？」<br />と奴も敬語を使う。<br />「えー、公社です。」<br />と返す。お邪魔してます、とはさすがに言わなかったけど。<br />「五族協和派ですか？」<br />と僕は言う<br />「えー、と。それを言うのはちょっと」<br />と奴。<br />「おい、早く飛び降りろよ！そこまできてるぞ！」<br />と芝生の庭から奴の仲間の声がする。ソ○ー製のゲーム機が部屋に転がっている。今の今まであれで遊んでいたのだろうか。暇人め。<br /><br />「早くしろよ。そこからぐらいだったら飛び降りられるだろ、お前でも」<br />お前でも、と言う言い方はひどいよな、と思う。いや、いらんことは考えないでおこう。今ここで飛び降りて外に逃げられると大変に面倒だ。どうしよう？脅そうか？<br />「ここで飛び降りると、死にますよ」<br />と思わず変なことを言ってしまう。二階から飛び降りても人は死なない。殺すぞ、だったらわかるけど。<br /><br />奴は僕の脅しなんか全く聞いていない。外を見つめたあと、僕の方を見る。それを三回ぐらい繰り返した。睨み付けているのか、同情しているのか、その中間ぐらいのあせった顔を僕に見せた。<br /><br />門の開く音と「くそ」という怒号みたいなのが聞こえた。お仲間は外へ逃げ出したらしい。もう一度彼は、外の庭を見下ろした。脚が震えている。怖いんだ。飛び降りることが、怖いんだ。<br />「飛び降りろ」<br />「飛び降りて、未来をつかめ」<br />と脳みその中で声がした。奴は僕だ。公社にやってくる前の、僕だ。<br /><br />奴は窓枠から降りた。自分の部屋のほうへ。ゆっくりと両手を挙げながら。へたれめ！と脳みそが五月蝿いが、無視する。<br /><br />投降か？投降なら、拘束できるぞ。拘束できたら、仕事は完璧だ。ボーナスとか付いたりして。取りあえず、拘束はソーニャに任せようと思った。暴れられると怖いからだ。ソーニャの前を塞いでいる手をどけた。<br />「ソーニャさん」<br />と言って、僕は彼の方へ腕を振った。<br /><br />ガンガンガンという音が子供用の部屋だった室内に響いた。何の音かわからなかった。音の方を向くと、薬莢が跳ねている。それが古くなったグレーの絨毯に落ちていく。ガンガンガン、ガンガンガン。ソーニャは引き金を引いている。え？なんで？拘束しなくていいの？ソーニャ？<br /><br />柔らかい肌に、金属がめり込む。で、弾けたようにも思う。死なないかな。死ななくていい方法はないかな、と願う。奴は、最後の力を振り絞るかのように、できるだけ銃から離れようと後方へよろめいた。手を落下防止ようの手すりに当てようとして失敗した。で、視界から消えた。僕は奴を追った。<br /><br />見下ろすと奴がいた。野球のネットに絡まった奴が。黒い液体が、芝生に落ちている。<br />「ソーニャ！」<br />僕は怒鳴った。テロリストにも怒鳴れなかった僕が。<br />「え？」<br />「どうして撃った？」<br />撃った理由はすぐにわかった。僕の手の合図を、撃つ事と勘違いしたせいだ。彼女もそれをすぐに悟った。少女は膝を折った。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいと壊れた機械のように彼女は繰り返した。<br /><br />「そっちもやったか」<br />逸見さんの声が庭からする。逃亡した奴の仲間を処分したみたいだ。僕は天井を仰いだ。木目の印刷された天井。ふと、あの橋桁のことを思い出した。あれは「墓」なのだ、と思った。<br /><br /><br /><br /><br /><br />ガールズオンザラン7話　近場のテロリスト（終わり）<br /><br /><br /> ]]>
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<dc:subject>ガールズオンザラン</dc:subject>
<dc:date>2009-09-14T06:48:45+09:00</dc:date>
<dc:creator>保田やすひろ</dc:creator>
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<title>ガールズオンザラン7話　近場のテロリスト4</title>
<description> 横田川に新しい橋が設営されている。かつては「新興」がついた、山の木を剥がして造られた住宅地と、対岸の国道を繋ぐための橋。この橋が完成すれば、渋滞は解消されるんだろうけど、自動車を持っていない僕には何の関係も無い。河川にはすでに数本の橋桁ができあがっている。遠近感を消失させるような、あまりにも巨大なコンクリートの塊。それ自体では何の意味もなさない、人間を遠ざけるような、ただ大きなだけの「もの」。古代
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<![CDATA[ 横田川に新しい橋が設営されている。かつては「新興」がついた、山の木を剥がして造られた住宅地と、対岸の国道を繋ぐための橋。この橋が完成すれば、渋滞は解消されるんだろうけど、自動車を持っていない僕には何の関係も無い。河川にはすでに数本の橋桁ができあがっている。遠近感を消失させるような、あまりにも巨大なコンクリートの塊。それ自体では何の意味もなさない、人間を遠ざけるような、ただ大きなだけの「もの」。古代の人間にあれを見せたら「王の墓か？」と言われてしまうかも知れない。墓？下らない妄想だけど、あれは「墓」じゃないのか？<br /><br />「墓」のそばには、作業員たちが使うプレハブ家屋が建てられている。室内は暑いせいか、赤錆色の皮膚をした彼らは、地べたに倒れこむように休憩をとっている。付近には、鉄骨を高いところにまで揚げる、タイヤが人の背ほどあるクレーン車が停まっている。巨大な文明。神話時代の墓標。<br /><br />未だ色の濃い、新しいアスファルトで出来た、堤防の上の歩道で、仕事中の僕は、ただ巨大な「もの」を見ていた。<br /><br />ソーニャが心配そうな顔で僕を見上げた。<br />「棚橋さん、大丈夫ですか？」<br />「大丈夫？ああ、うん」<br />「疲れてるんだったら、私一人に任せてください」<br />「いや、違うんだ。あれを見ていたんだ」<br />僕は巨大な「もの」を指差した。<br />「ソーニャさんは、あれをどう思う？ゾクゾクってしませんか？」<br />「うーん。判らないです。私、義体ですから」<br />「あの橋桁は、何に見えます？僕には墓に見えるんだ。」<br />「ハカですか？」<br />「そう、墓」<br />ソーニャは僕の言っていることを必死で理解しようとして、少しうろたえ始めた。妄想の押し付けはやめよう。ソーニャがかわいそうだ。「行こう。仕事だ」と言った。「はい」と彼女は僕の後ろを付いてきた。戦闘の時は僕の前に立ち、いつもは僕の後を付いてくる少女。あの巨大な「もの」のことを知らないソーニャ。<br /><br />数メートル歩いたところに、看板が置かれてある。「橋梁工事中」とある。その隣に、大きな字で「テロ警戒中」と赤字で書かれている。テロリストがあんな無意味なものを狙うわけが無いと思う。同時に、あの巨大な「もの」に無人機が突っ込むところを夢想してしまった。<br /><br /><br /><br />今回の標的は職場から近場だということで、トレーニングがてら歩いていこうと思った。が、これが失敗だった。橋に繋がる道路から入っていく、「新興」だった住宅地は、山の中にあって、山の中にあるということは、坂道を登ることに他ならないからだ。二日前に万引きを見た本屋あたりで、脚の後ろが釣りそうになった。まだ夏になってもいないのに、汗でシャツがよれはじめている。服のチャックを全開にして、袖で顔を拭いた。タオルを持ってくるんだった。タスキ掛けしたＡＫの紐の下が蒸れ始めている。汗疹ができてしまうんじゃないか。体が匂ってきそうなので、ソーニャから離れて歩いた。歩くペースが遅れている僕を、ソーニャは何度も振り返って、心配そうに声を掛けてくれた。<br />「体の弱い棚橋さんをひどい目に会わせるテロリストは許せません」<br />と。まあ僕が運動不足すぎるだけなんだけど。僕のことを心配するソーニャがさっき言った言葉「墓ですか？」を「破瓜ですか」に誤変換して、脳みその中で弄び、苦痛に耐えた。<br /><br /><br />途中、民家を改造した、たこ焼き屋があって、ソーニャがお預けを食らった犬のような顔をしたから、休憩のついでにたこ焼きをおごることにした。<br /><br />店のオバハンはヒーターの中からたこ焼きを取り出した。出来たてを出せよと思ったけど、３００円と安かったので文句は言わないようにする。僕はジュースを買って、ソーニャにたこ焼きを渡すと、「ありがとうございます」と深々と礼をして、奪うような速度でプラスチックのケースを受け取った。<br /><br />ソーニャはたこ焼きに爪楊枝を刺した。が、不器用な彼女は、それを上手く口まで運ぶことができない。爪楊枝を刺すと、持ち上げるんだけど、爪楊枝からメリケン粉の塊は、何度もすべり落ちた。木の針が、たこ焼きの表皮を破って、プラスチックのケースに戻る。中から白濁した汁が漏れて、ぐちゃぐちゃになって、小さく赤いたこが見えている。<br />「お箸をもらおうか？」<br />と訊くと<br />「いいです。何事も練習です」<br />とソーニャは言った。<br /><br />第○世代型の義体は、安価かつ頑丈で、パワーやスピードは他の世代並み、とのことだ。しかし人工筋肉の連携や、脳と身体との連結、指や手の作りは簡略化されており、彼女たちは総じて「不器用」だ。それを補うのが僕たちの仕事だ、とグランドで転んでブルマに砂をつけているシオリを眺めながら逸見さんが言っていた。<br />「でも、何事も練習で上手くなる。単純なトレーニングを堅実に積むことで、彼女たちは成長する」<br />と逸見さんは、シオリのお尻についた砂を払いながら言った。<br />「尻は成長しないほうが好きなんですね、わかります」<br />と冗談を言いたくなったが、僕はアホではないのでやめた。<br /><br />「棚橋さん、できました。」<br />とソーニャは持ち上げることに成功したたこ焼きを僕に見せた。<br />「ソーニャさん、頑張ったね」<br />と月並みな言葉を返す<br />「はい」<br />と彼女は曇りの無い笑顔で応じる。持ち上げた球体を、彼女は口から迎えに行って、押し込んだ。マヨネーズが唇についている。<br /><br />たこ焼き屋のベンチに腰をかけてジュースを飲む。ふと外を眺めると、また看板があって、何か書かれてある。「日本人は看板が好きですね」と白髪のオッサンコメンテーターの口真似をする。で、看板には「不審者に注意」とある。作業着を着てベンチにもたれ掛かっている汗臭い男。その横でたこ焼きを食う国籍不明の少女。どう見ても不審者じゃないか。<br /><br />オバハンの方を見ると、オバハンも僕たちをみていたせいか、オバハンは気まずそうに目を背けた。明らかに不審者を見る目だ。はやくここを離れたほうがいい。ソーニャに声を掛けて現場に向かおうと席を立った。その時ソーニャは、持ち上げたたこ焼きを再び僕に見せた。<br />「その、棚橋さん。お一つどうですか」<br />ソーニャは目線を少し泳がせながら、僕に言った。たこ焼きごと白い手を口にほおばりたかったが、この場でそれをやると警察がやってきそうな気がした。<br />「いや、いいよ。それはソーニャさんの分だし。それに気分が悪くて、たこ焼きは食べられないよ」<br />と言った。ソーニャは寂しそうな顔をした。油断したせいか、たこ焼きは、地面に落ちてしまった。<br /><br /><br /><br /><br /> ]]>
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<dc:subject>ガールズオンザラン</dc:subject>
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<dc:creator>保田やすひろ</dc:creator>
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<title>ガールズオンザラン7話　近場のテロリスト3</title>
<description> スキンヘッドで初老の大男が段上に立った。○県福祉公社の所長だ。逸見さんが「あの風貌のほうがテロリストじみている」と言っていた。テロリストかどうかは知らないけど、堅気ではない顔つきではない。僕を含めた社員たちが眠い目を引っさげ、今日が始まったことを呪うような表情の時に、瞳の中の黄色い光を搾り出すような顔を一人している。殺気とはああいうもののことを言うのだろうか。スキンヘッドの男が口を開いた。「皆さん
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<![CDATA[ スキンヘッドで初老の大男が段上に立った。○県福祉公社の所長だ。逸見さんが「あの風貌のほうがテロリストじみている」と言っていた。テロリストかどうかは知らないけど、堅気ではない顔つきではない。僕を含めた社員たちが眠い目を引っさげ、今日が始まったことを呪うような表情の時に、瞳の中の黄色い光を搾り出すような顔を一人している。殺気とはああいうもののことを言うのだろうか。<br />スキンヘッドの男が口を開いた。<br />「皆さん、ニュース等でご存知のとおり、中華民主共和国で同時多発テロが起こりました。幸いにも人的な被害はありません。ですがこの度の国連本部や一般企業へのテロ行為は、新生中国に対する攻撃であり、国連・ＮＰＯを中心とする中国国民への支援、ひいては国際秩序への攻撃です。」<br /><br />「国連職員ってのは、どれぐらいの給料をもらってるんだろうな」<br />と逸見さんが空を見上げて呟く。<br />「この件で、かなりの『見舞金』が支払われたらしいぞ。国連職員と自衛隊員だけじゃなくて、アニメ屋さんにも。『税金の無駄遣い』だの『メディアと政治の癒着』だの国会で話題になっていたけど、追及するのがあの党じゃなあ。」<br />逸見さんは国会中継なんて見てるんだ。<br />「まあ、中国で頑張ってる奴らより、うちらのほうがマシかもな。あいつらがいるから。」<br />逸見さんはシオリを指さした。その通りだと思う。こんな堅気とはいえない仕事、義体でもいなきゃ、正直やってられない。<br /><br />ソーニャに目をやった。ＡＫを掲げ、「気を付け」の姿勢で立っている。無気力な社員たちとは大違いだ。使命というか、宿命のようなものを、彼女は難なく背負っている。<br />彼女も僕たちを見ていたせいか、少女と目線が交差した。ソーニャの表情が一瞬明るくなった後、彼女は弛緩した顔を引き締めなおした。飛びつきたくなった。飛びついて、あのくすんだ金の髪を撫で回したくなった。勿論頭以外も撫で回したかったが。<br /><br />「テロの首謀者とみられる王野公平は、わが県出身です。」<br />そうだ。王野公平は、僕の敵だ。僕らがＡＫを担ぎながら仕事をしているときに、奴は遊び半分で大きな「祭り」を中国で起こした。暇人の目立ちたがり屋め。奴が僕の世代の代表になるのは、単に間違いだ。大陸の砂塵ではなく、国道の排煙を浴び、世界を変えるのではなく、世界を呪っているものこそが、僕らの世代の代表たりえる。ＴＶのコメンテーターの白髪を引きちぎりたくなった。<br />「彼の潜伏先の手がかりは、中国だけではなく、日本にこそある。と私は考えております。無論それは、わが県のことであります。本庁の方もそう仰っております。」<br />本庁から支援が来るんだろうか。新しい義体はどんな娘だろう。<br />「ですから皆さんには、テロリストの排除ではなく、拘束をおねがいしたい。」<br />社員の数人からため息が漏れた。逸見さんは苦笑いまでしている。<br />「生け捕りにしなければ、潜伏先を吐かせることはできません。皆さんの鋭意努力を期待しています。」<br />所長が段上から降りて、社屋のほうへ帰っていった。批判の声を完全に無視する後ろ姿は少しかっこいいとも思った。けど、どうやって生け捕りにすればいいんだろう？拘束するノウハウというか、逮捕の訓練なんて一度もやったことないぞ。<br />「まあ、拘束の努力はしたけど、相手が暴れたんで無理でした。という感じでやろう」<br />と逸見さんが呟いた。僕はとりあえずその意見に頷いておいた。<br />できれば逮捕する。無理は絶対にしない。慣れてきたら、逮捕の努力を進める。少しずつ自分は成長を重ねればいいと思った。一撃で世界と自分をひっくり返すようなやり方は何も生まない。日々の単純な作業の堅実な積み重ねこそが、すべてを変えるのだ。<br /><br /><br /><br /><br /><br /> ]]>
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<dc:subject>ガールズオンザラン</dc:subject>
<dc:date>2009-09-08T11:59:43+09:00</dc:date>
<dc:creator>保田やすひろ</dc:creator>
<dc:publisher>FC2-BLOG</dc:publisher>
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